空の上での七並べ

いがもっちの意外かも

若者が出逢っておきたい100の物語 Reserve.st

Track13 HUMILIT

  僕の大学は日本有数の酒処で駅近に酒蔵通りという酒蔵が近接しているレンガ通りがあった。

 ある夜、僕はA子とその酒蔵通りを歩いていた。

 話は海外、とりわけ留学についてだった。

「僕は留学したいという気持ちはあるけど留学には僕よりふさわしい人がいると思うんだよね」

 僕は海外に行きたいという気持ちや留学したいという気持ちはもちろんあった。

 しかし僕なりに海外は大人になって稼いだ後に訪ねようと自分なりに決めていた。

 海外欲はそのように消化したはずだった。

「君はさ。なんだか自分のこと過小評価しすぎだよね」

 ときっぱり言い切った。

「そんなことはないと思うけど……」

 僕はそう呟いた。

 あれ以来ときどき彼女の言葉を咀嚼する。

 今も自分の海外に対する価値観は変わりないが確かに彼女の言っていることも少なからず当たっている。

 価値観を変える必要はないが、彼女は自分が海外に対する気持ちを抑える必要はないと言ってくれたのだろう。

 謙虚になることと卑下することは違う。

 そのことを彼女は堂々と僕に教えてくれた。

 

Track14  FORTITUDE

 後輩のB子とイタリアンに行ったのは大学3年生のとき。

 彼女のことは前々から気になっていた。

 本が大好きだったり昔の哲学者や文学者に造詣が深くその滲み出る知性に惹かれた。

 食事の会席では、僕は話上手じゃないわりに質問したり彼女のことを聞き出そうと懸命だった。

「私はやりたいことをやるだけです」

「お金とか人気とか求めなくてやりたいことをやって行く」

「この地に骨を埋めていいと思っています」

 彼女からは次々とかっこいい言葉が溢れ出して来た。

 学校のこと課外活動のこと部活動のこと。

 彼女の活発さは男子顔負けだった。

 それでいて過信も卑下もなくただ淡々と自分に対する評価を下していた。

 経験からの裏付けがなければこんなにも自信は溢れないだろう。

 会計のときに、

「ここは僕が払うよ」といっても、

「いえ、バイトしてるのでいいです」

 と奢られることをきっぱり断る彼女も壮健で美しい。

 勝ち負けなんてそんなものないけれど、もしそんなものがあるとしたらおそらく彼女の完勝だ。

 彼女のブレなさは男勝りで会席のときにパスタが似合わないと思っていた。

 こんなにもパスタやイタリアンが似合わない女の子もいるんだなと思い出して笑ってしまった。