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空の上での七並べ

いがもっちの意外かも

ハヤシライスで世界を救え!! 後片付け

 朝日が昇って間も無くして僕たちはカフェに集まった。

「昨日はよく眠れたか?」

 店長が声をかけてくれる。

「はい。バッチリです」 

 僕はうんと背伸びをしながら答える。

「いよいよ今日ですね」

「だな」

 今日はついに前回「美味しくない」と言われた女性にリベンジマッチを行う日。焦りはなく清々しささえあった。

「よしやるか!」

「やりましょう!」

 朝からゴタゴタ準備を始め、それが終わるといつものようにダラダラしてるとすぐに女性が来る時間となった。

「こんにちわ」

 女性がやってきた。

「あれから首尾の方はどうですか?」

 余裕を持って女性が訊ねてくる。

「おおよ、バッチリ」

「本当のハヤシライスを味あわせてあげます」

「あら、楽しみだわ」

 にこりと笑う女性。

 調理に取り掛かる僕。数多くの試行錯誤した賜物かいつの間にか調理の手際は以前より格段に上がっていた。

「おあがりよ!」

 僕は女性にハヤシライスを差し出した。

 女性が一口食べる。

「これは!? コクが増してる?」

 そしてもう一口食べる。

「デミグラスソースを使ったわね」

 さすがに女性というだけ味に敏感だ。

「そうっす。デミグラスを加えることで濃い味に仕上げました。あとは豆乳っすね。それもコクを増してます」

 なるほどという顔をする女性。

「よく、この短期間でここまで仕上げましたわね」

 ナプキンで口を丁寧に拭きながら女性は僕たちのハヤシライスを褒め称えてくれた。

「実際、ギリギリだったけどな。この味にたどり着くには。ハヤシライスの喪失。思わぬライバルの登場。いろんなことがあったからな」

 店長が答える。

「どうだい?」

「ええ、美味しいです」

 歓喜の瞬間だった。僕と店長はにっと笑いお互いにハイタッチを交わした。

 外は春日和。猫があくびをしながら街を徘徊している。カフェの時間はこうしてゆったりと過ぎていく。

 ハヤシライス。牛肉や玉ねぎをデミグラスソースで煮込んだ料理。その地位はカレーライスより馴染み薄い。

 S店長と僕。

 ここにハヤシライスに情熱を注いだ二人の英雄がいたことは今となっては誰も覚えていないのであった。

 

ハヤシライスで世界を救え!!(完)