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空の上での七並べ

いがもっちの意外かも

写絵

 水の斑点を様した畦道を歩く。

 停留所の茅葺小屋に女性が独り佇んでいる。

 彼女が身に纏う衣服は私の所持する服だ。

 俯せた顔を伺う。

 それは紛れもなく私の顔だった。

 瓜二つの顔ではあるのだが似て非なる顔。

 ブツブツと面皰だらけの顔はまるで沈殿した泥水の様。

 私を睨む彼女。

 なるべく顔を合わさないように大人しく座っている。

 そこへバスがやってきた。

 女性が乗車し、私も続く。

 対角線の背後から彼女の視線を感じる。

 なんとも居心地が悪い。

 ふと、ちらと見やると女性は消えていた。

 

 それから数年後。

 私がバイト勤務から帰路についていた。

 時刻は真夜中を過ぎている。

 自転車を漕いでいると前から同じく一台の自転車がやってきた。

 すれ違いざまに傍目に写る。

 私の顔だった。

 しばらく経ってはっとなり足を止め振り返った。

 やはり誰もいなかった。

 背筋が凍るでも苦虫を噛み潰すようでもない。

 ただただ蹴鞠玉の風船が宙に浮くかの感覚だ。

 

 社会人になった私はスーツを纏いすっかり都会人になっていた。

 スクランブル交差点を闊歩していた時だった。

 懐かしいあの感覚だ。

 私は、はたと立ち止まり周囲を見渡す。

 行き交う人々の中で微動だにしない私がいた。

 私の方をじっと見つめている。

 全ての時間が止まったかのように私は「私」を見る。

 私は笑みを一つこぼした。