空の上での七並べ

いがもっちの意外かも

世界一不幸決定戦 前編

※この短編は前編、中編、後編の3部構成からなります。

 

「さぁ、始まりました。大人気企画・世界一不幸決定戦。この度、459回目を迎えることとなりました。司会は私、先行(サキユキ)訃冥(フメイ)が努めさせていただきます」

 盛り上がる観客席。

「さぁ、この世界一不幸決定戦なのですが、死んでしまった人たちに『私が一番不幸だったんですよ』と自慢してもらう大会でございます。そしてその人たちの中から一番不幸な人をご観覧の皆様の投票で決めさせていただきます。なお優勝者には景品があり望むことを一つだけ叶えてくれるというものです」

 先行(サキユキ)はキレのある動きで両の手を広げる。

「さぁ、それでは積もる話も色々とございますが、冗長になってしまうだけなので早速行ってみましょう。今回の参加者の皆様の登場です!」

 参加者である5人が会場へと入ってくる。

 盛大に盛り上がる観客席。

「いやぁ、どの人も不幸な顔をしておりますね〜。今回もとっておきの不幸話が聞けそうです。それではいってみましょう。エントリーNo.1リヨンです。どうぞ!」

〜〜リヨンの独白〜〜

 神様などいない。僕はそう断言することができます。僕は生前一人の愛する女性がいました。名はミシェル。彼女とは幼い頃から近所づき合いでよく一緒になって遊んでいました。大きくなったら私リヨンのお嫁さんになってあげると言われたことも今となってはいい思い出です。そんな僕たちが恋人同士になるには時間がかかりませんでした。きっと僕はこのままミシェルと結婚して家庭を築くのだろう。そう思っていました。そしてそれは実現するはずでした。成人してからもミシェルとの関係は続き、ついに僕がプロポーズをし彼女と結婚することになりました。いつかはこうなることがわかっていたとはいえ、オッケーされた時の嬉しさはなんと表現したらいいか。ミシェルも同じ気持ちだったのか泣いていました。「これからは幸せな家庭を築いていこうね」、「子どもは何人かなぁ?」など僕たちの未来は希望に満ち溢れていました。でも、結婚が実現することはありませんでした。結婚式当日、私がすでに会場に入り服装を整えている最中にその連絡はやってきました。「ミシェルが交通事故で亡くなった」。話を聞いた瞬間、僕は何が何だかわかりませんでした。式は中止になり代わりに彼女の葬儀が行われることになりました。葬儀が終わって一人になった時、僕はようやく実感しました。ああ、彼女とはもう二度と会えないんだと。僕は泣いて泣いて泣き叫びました。幼い頃から一番付き合ってきた最愛の人、いわば僕の分身のような人を亡くしたんだと。彼女がいない世界では僕はもう生きている意味はありません。そうして僕は自殺をし、ここにいます。ミシェル。できることならもう一度、君に会いたい。そうしていつまでも君の手を握っていたい。

以上が僕の不幸談です。

〜〜リヨンの独白終了〜〜

 盛り上がる観客席。

 涙と拍手と歓声が波のように襲ってくる。

「リヨンさんありがとうございました。時を共にしてきた最愛の人との死別。そして叶うことがなかった結婚式。どこまでも浮ばれません。トップバッターながら世界一不幸と呼ぶにふさわしいお話をありがとうございました」

 マイクをくるくるっとさせる先行(サキユキ)。

「さぁまだ会場冷めやまないですが、続いていきましょう。エントリーNo.2エリーザ……おっと」

 先行(サキユキ)から乱暴にマイクを奪うエリーザ。

  彼女はリヨンの方を向き、

「呆れたわこんなのが世界一不幸だなんて。あなたなんてまだ幸せな方よ」

 「なんだと」と怒ったリヨンを先行(サキユキ)が止める。

 会場からは彼女向けの大ブーイングの嵐だ。

愛する人がいて、その人と長く時を過ごせたんだから。そりゃあ、最期は最悪かもしれないけど、それでもそこに至るまでの人生は幸せじゃない。私なんか……」

〜〜エリーザの独白〜〜

 私にも先ほどのリヨンと同じく愛する相手がいました。いや、正確には「愛したと思っていた相手」かしら。まぁ、そのことは追い追い話すわ。私の初めての恋人は実は元は姉の夫だったの。私は二人が付き合ってた時から彼のことは気になっていた。とても優しくて妻の妹である私にも紳士のように接してくれた彼のことを私も好きになった。でも姉のためにも私はその人のことはすっぱり諦めることにしたわ。姉には幸せになってもらいたかったから。けどある日突然、姉が亡くなった。原因は不明。ビルの屋上から落ちたの。警察は自殺で片付けてしまったわ。姉とは仲が良かったから当時はすっごく悲しんだわ。何日かは立ち直れなかった。そんな時に手を差し伸べてくれたのが私の家族とそして姉の恋人だった彼なの。彼の助けもあって私は少しずつ立ち直っていったわ。救いの手を差し伸べてくれた彼と私は付き合うことになった。そして彼と結婚することが決まった。ところが私たちの結婚式の1週間前、事件は起こった。私が彼の部屋で偶然見つけた書類。私は学識があまりないからよくわからないけど何やら怪しいことが書かれているのはわかった。気になって探偵の人に見せるとどうやら彼は結婚詐欺師である可能性が高いと言われた。信じられない私は彼が帰った時にこの書類を見せた。詐欺師なんて嘘だと思ってた。この書類には何かしら理由があるんだと。けど書類を見せるなり彼の態度は激変した。私をブツなり蹴るなどして暴行を加えたの。「どこでそれを見つけた」「なんで俺の部屋に入った」って以前の優しい彼はいなかった。そうして「姉と一緒だな」と彼は言って私の首を絞め私を殺した。殺される最中、私は思った。姉はこの人に殺されたんだ。そして私は彼に愛されてなかったんだ。私は異性から愛されずに死んでいくんだって。私の人生も姉も全てあいつに奪われた。それなのにあいつは今ものほほんと生きてるんだわ。

〜〜エリーザの独白終了〜〜

 いつのまにかシンとなりエリーザの話に聞きいっていた会場は彼女が話終えると同時にわっと盛大に湧いた。

「わかったかしら。あなたは短かったかもしれないけど本当の愛を抱えたまま死ぬことができたの。私に比べたらそれはとっても幸せなことだわ」

 泣きじゃくりながらエリーザはリヨンに言った。

「これは不幸。辛すぎる。不幸極まりないですね。初めての恋人がまさかの結婚詐欺師でさらにその男に殺され、姉も奪われてしまった。あまりにも不幸です。私もすごく落ち込んじゃいました」

 先行(サキユキ)が目をこすりながら言う。

「今大会はすごくレベルが高いですね。大会の方もすごく盛り上がってきました。続いてはどんな話が出てくるのでしょうか? エントリーNo.3の方どうぞ!」

 

 出場者5人の内の1人の男が誰にも聞こえない声で独り言を呟いている。

「なんなんだここは。どうして僕はここにいる。僕はなんで死んだんだ」

 男は過去の記憶が全くなかった。

「僕はいったい誰なんだ?」