空の上での七並べ

いがもっちの意外かも

若者が出逢っておきたい100の物語 Reserve.st

 

Track9 170YEN

「君が毎日退屈だというならば170円旅行にでも出たらいいよ」

 黒猫はそう言った。

「170円旅行?」

 僕は聞き返す。

「170円を持ってとにかく家から飛び出すのさ。あとはその時の気分次第。そして170円以内でちょっとした近場の探検をするのさ」

「なるほど。それにしてもなんで170円なんだい?」

「これはね、170円が僕の体験の中では一番ちょうどいい金額なんだよ。170円ってだいたい都会だと一駅分くらいの値段だろ? 自動販売機もだいたいそんなもんで買える。たい焼きとかもそれくらいの値段だよね」

「へぇ、そういうことか」

「走って緑や街並みを楽しむもよし。裏道にいってみて水を飲みながら木陰で休むのもよし。ちょっとしたスイーツを買うのもよし。この170円で無限な楽しみ方ができるんだ」

「それに別に170円きっかりでなくても自分のベストな金額を見つければいいのか」

「そういうこと。200円だったら365日行なったとしても7万円。それくらい出せるでしょ?」

「そうだね。今度から是非やってみるよ」

「うん。もしかしたらどこかで旅行している僕に会うかもね」

 これはとある神社の境内における黒猫との対話だった。

 

Track10 READING

『男は言い寄られるくらいいい男にならなければいけませんよ』

 師匠はそう言った。

 

「本に書いてあったんだけどさーー」

 本や漫画をお互いに読んでいる最中に僕が友だちに話しかける。

 彼はよく僕の家に遊びにくるのだ。

「男は女性から告白されるくらいに自分磨きをしないといけないらしいよ」

「御託はいいからはよ彼女作れ」

 その友だちはモテるから当然彼女がいる。

「いや、でも本にーー」

「あのさぁ……」

 その友だちは読んでいる本を置いて僕に向かって、

「本をたくさん読む君のことは尊敬してるんだけど、本に書かれていることが全て正しいわけじゃないよ」

 と言ってきた。

「その通りだ」と思いつつ僕は反論することができなかった。

 

 ドイツの悲観の哲学者ーーアルトゥル・ショーペンハウアー

 彼は著書『読書について 他二篇』の中で読書人に向けて警鐘を鳴らしている。 

 簡単に言えば、「読書をしすぎれば頭が豆腐になっちゃいますよ」というものだ。

 ”読書をしていいのは自分の思想の源流が途絶えた時だけ”

 だと彼は語る。

 

『なんにせよ読書が毒書になってはいけないね』