二人の英雄伝説
朝日が昇って間も無くして僕たちはカフェに集まった。 「昨日はよく眠れたか?」 店長が声をかけてくれる。 「はい。バッチリです」 僕はうんと背伸びをしながら答える。 「いよいよ今日ですね」 「だな」 今日はついに前回「美味しくない」と言われた女性に…
僕は深呼吸を行う。 今まで行なってきた数多くの試行錯誤を思い出す。そしてーー。 「よし」 まず玉ねぎを切って炒める。 炒めた玉ねぎは鍋に入れ今度は牛肉をバター醤油で炒め玉ねぎと同じく鍋に投入。 ハヤシライスのベースはワインとトマトとデミグラスだ…
☆美味しい食事の代償は圧倒的な敗北感であった…… 「あの味を越すことができると思うか?」 店長は言った。 「いや、今の俺じゃとてもじゃないけど無理です」 僕は言う。 中村屋のハヤシライス。まさかレトルトのハヤシライスがここまで美味しいとは思わなか…
【ここまでのあらすじ】 ハヤシライスの地位向上のため。S店長と僕。二人の英雄がハヤシライス作りに挑むこととなった。しかし試作段階初期、知り合いの女性に「美味しくない」の一言を言われ挫折を経験する二人。逆襲に燃える一方、あまりに多い試作のため…
「やはりベースを根本的に変える必要があるな」 「デミグラスソースを使えばいいんじゃない? やはりもっと味を濃くする必要がある」 「それだ! トマトベースではなくデミベースにすることで酸味を抑えコクのある味を出すことができる」 「牛肉を炒める時は…
ある日のことであった。 ハヤシライス調理実験初期段階。 「あれ、これうまいんじゃね? 店出せるくね?」 と、店長と僕はノリに乗っていた。 そんななか二人の知り合いの女性に試食してもらう。 「正直に言っていいですか? 美味しくないです」 初の女性の…
ハヤシライス。 カレーライスが席巻する現代においてその地位は決して高くない。 カレーライスをどうしても食べたくなる日はあるがハヤシライスをどうしても食べたくなる日というのはあまり聞かない。 そんな料理界のポジション争いをはかる彼らに救いの手が…
はじめに言っておくが、これはハヤシライスで世界を救おうとした壮大な人生の追体験記だ。 〜This is a story for S store manager. Thank you for dear all staff〜 アルバイト先でのなんでもない日に伝説の幕は開けた。 「俺の店を支えてくれる決め手はハ…